2018/05/22

ドバイで「法人設立時の外資49%まで」ルールが撤廃される

オイル価格の低迷により、長らく不調なUAE経済であるが、それを打破すべく新たな政策がUAE政府により閣議決定された。

外国人の居住者ビザ取得と、ローカル法人の設立に関してだ。

ドバイを含むUAE(アラブ首長国連邦)では、フリーゾーン以外で「外国資本100%」のビジネスを行うことはこれまで不可能であった。だが今回の閣議決定により「大株主がローカル資本でなければならないルール」が撤廃される方向となった。詳細は今年中に各首長国の経済局がレギュレーションを纏める方針だ。

現在のローカル法人設立ルールについてはこちら↓
ドバイ ローカル会社設立、LLC法人設立

中東諸国の中では、情勢不安定化によって外資の流入が滞ったバーレーンがすでに「外資100%ビジネス」を許可しているが、UAEもグローバル化の流れに沿い「外資100%ビジネス許可」に舵を切ることで国際的な競争力を高めるのが狙いのようだ。

建国の父を敬うシェイク ・ザイード・イヤーの今年、大きな政策変更を発表した

同時に居住者ビザ発給のルールも変更される。これは今年のQ3(第三四半期)から導入されるとの話だ。

インベスター(投資家)を含む一部外国人の居住者ビザが10年に延長


外資100%のローカル法人の話の前にまずはビザについて書きたい。

今まで、外国人のUAE居住は、3年(または2年)のビザを永遠に更新し続ける、という形で長期滞在する方法だった。
なので生まれてからずっとドバイに住むインド人は結構いるが、これらの人々は生まれたときから「3年間のビザをひたすら延長し続けて現在40歳」という人も少なくない。

ビザ更新の度にそれなりのビザ費用がかかるし、実際3年は結構早くやってくるので、その都度ビザ更新をするのは結構面倒くさい。(まあ、外国人へのビザ発給が異様に厳しい日本よりは、遥かにビザ取得が簡単なシステムではあるのだが。)

それが今回のレギュレーション変更により一部の外国人はビザ期限が10年となる。
居住者ビザが10年に伸びる該当者は以下だ。


  • ビジネス・オーナー
  • 高い技術を擁する医師やエンジニア、研究者など
  • 優秀な成績の学生


よってビジネス・オーナーである私の居住者ビザも、次回更新する際は10年ビザとなるのだろう。

上記のリストからは、優秀な外国人を取り込もうという狙いが見て取れる。「優秀な外国人を取り込むことで国を発展させる」という点では、ご存知シンガポールがこの方策の成功例だ。

10年に延長される居住者ビザで得られる立場の安定と、「法人税・所得税が無い」という税制メリットによって、アントレプレナーシップ旺盛な人材を取り込んでいこう、という意気込みが感じられる。

今までUAEでは、アントレプレナーシップ旺盛な人材は、外資100%でビジネスをスタートできるフリーゾーンを中心に誘致を行ってきた。

だが・・・

100%外資のローカル法人設立が可能に


フリーゾーンとローカル法人の違いについてはここでは言及しないが、興味があればこちらへ↓

ドバイ・UAE 会社設立|ワイズ・コンサルタンシー

今まではドバイモール内で何かを販売したいとか、ドバイ居住者(またはUAE居住者)に向けて日本製品を売りたい、といった場合はUAE人をマジョリティ資本(スポンサー)としてドバイ経済局に法人登記する必要があった。これが今回の閣議決定で撤廃される意向となったのだ。

だがレギュレーション詳細はまだ決まっていないので、ドバイ・UAE経済に効果があるかどうかはルール次第だ。

外資100%許可によって、「金はまったく出していないが、書面上大株主であるUAE人ローカルスポンサーが、実際には資金を出した外資の会社や会社の所有物を乗っ取ってしまう」といったリスクは排除される。

だが今後のレギュレーションが、引き続きUAE人を仲介しないと法人登録が出来ない様なルールであった場合、何もしないUAE人エージェントに毎年高い費用を払わなければならない、といったケースでは、自由度という点では現状とあまり変わりがない、といった結末もあり得る。

それから、必ずしも働き者とは言えない(しかも給与の高い)UAE国籍者を必ず雇わなければならない、といったルールが適用されるようだと、国際的競争力、という観点ではかなり厳しい。

なのでこの レギュレーションへの 評価は、詳細が決まり、どの様に運用されるかを待ってからになるだろう。


オフィス空き物件の解消になるか


この閣議決定のニュースの後、早速DFM(ドバイ株式市場)に上場しているすべてのディベロッパー株が上昇に転じた。
ドバイによく来る人、すでに住んでいる人はご存知と思うが、ドバイ内のオフィス物件には空きが多い。

UAEではフリーゾーンはゾーン内のオフィスしか借りられないので、ドバイ内の通常のオフィス物件を埋めるにはどうしてもローカル法人が爆発的に増える必要があるのだ。

いっそうフリーゾーン 法人とローカル法人の境界があいまいに


過去のVATに関するコラムでも書いたのだが、

ついにVAT(付加価値税)詳細が姿をあらわした。
https://blog.ys-consultancy.com/2017/11/vat.html

2018年から導入されたVAT(付加価値税)は、すでにフリーゾーン法人にも例外なく履行されており、ローカル法人との大きな違いはない。

ローカル法人の外資100%への開放を受け、なお一層フリーゾーン法人とローカル法人の区別が曖昧になってくる可能性が高い。

今までは多くの外国資本が「外資100%」を理由にフリーゾーン法人設立を好んでいたのだが、ローカル法人で外資100%がOKとなった場合、これから決まるレギュレーションの詳細によっては、フリーゾーン法人並に自由度の高いローカル法人を設立できる可能性がある。

そうなってくるとフリーゾーンとの違いは、


  • オフィスや倉庫、またはヴァーチャルオフィスなどの物件オプション
  • 税関の 扱い


という2点の違い くらいしか見当たらない。多くの会社がフリーゾーン法人からローカル法人へ転身するだろう。

2018/04/23

ドバイ・パークス&リゾートに見るドバイ・メガプロジェクト開発の行方

このページは、前回の、
Dubai Parks and Resorts(ドバイ・パークス&リゾート)で遊ぶ
からの続きです。

前回、ドバイ・パークス&リゾートに家族で出かけ、くじで当選した9000人が訪れたからか、珍しく人出が多かったことについて書いたが、

通常は利益が上がらないのか運営会社の株価は低迷中


Dubai Parks and Resorts(ドバイ・パークス&リゾート)の運営会社は政府系のDXB Entertainments PJSC。

長らくドバイでは、企業がIPOで株式公開する際、価格を一株AED1に設定するのがデフォルトで、地域経済は(アブダビの)オイルマネーで潤っていたので、何の株でもとにかく「IPO時に買っておけばいずれは上がる」というのが通常だった。

当然みんな買いたいので、買える枠というのはそれほどなく、抽選みたいな感じで割り振られる。

このドバイ・パークス&リゾート(DXB Entertainments PJSC)のIPO時、私も当然応募した。そして6295株をゲット。

だが・・・

テーマパーク工事中に公開時に比べ2倍程度になった株価は、パーク・オープンと共に下落しはじめ、しばらく株価すらも見ていなかったが、今確認したら0.44ディルハム。日本円にしたらたったの13円。

長らく含み損を抱えたまま。

オープンして1年半以上が経った現在、配当(ディビデンド)は出たことなど無く、経営は苦しいと見える。 確かにここはいつ来てもスカスカなのだ。

そのスカスカぶりが、行楽地でもレストランでも、利用者にとってはドバイの最高に良い点の1つなのではあるが・・・・

とにかく何でも造り過ぎちゃうのがドバイ流


近年の大発展とそれに伴う不動産開発ラッシュが著しいドバイでは、テーマパークの開発もラッシュ中。

現在のドバイ人口は300万人弱、アブダビは120万人程度と予想されており、UAE全体でも1000万人に満たない。
その程度の人口のこのエリアには、この巨大テーマパーク・リゾートのドバイ・パークス&リゾート以外にも、

  • フェラーリ・ワールド 
  • IMGワールド・オブ・アドベンチャーズ 
  • ワーナーブラザース・ワールド(アブダビに建設中)

と、どう考えても巨大テーマパークが沢山ありすぎ。

ちょっと毛並みは違うが、ドバイランドにあるグローバル・ヴィレッジ(Global Village)もけっこう巨大なテーマパークだ。

ところでドバイにあるテーマパークの内、最も人気が高いのは10月から4月までしかオープンしないこのグローバル・ヴィレッジだろう。ここは入場料がAED15(400円強)と圧倒的に安く、派手なライドやお金のかかるキャラクター・コンテンツはほとんど無く、地域の雑貨売りが中心だが週末にはものすごい人出がある。

いつも賑わうグローバル・ヴィレッジ

ほぼ中国企業の製造業者/貿易業者のみが入居するドラゴン・マートがいつも盛況なことを見ても、ドバイ市場(マーケット)のボリュームゾーンは「安かろう悪かろう(必ずしも最近はそうは言えないが)」レベルの価格/商材あたりに需要が多いと言える。

アメリカやヨーロッパ、日本などと違い、まだまだ先進国とは言えないし、いわゆる発展途上国からの出稼ぎ移民が多いドバイでは、1回の来訪でAED200(5000円以上)かかるドバイ・パークス&リゾートは、居住者をターゲットにするにはニーズと供給がちぐはぐなのかもしれない。

巨大開発の話に戻るが、この手の「造り過ぎ」的話は遊園地だけではない。

ドバイ国際空港は巨大なハブ空港だが、既に飽和状態であるためにアブダビ寄りの砂漠地帯(DWC、またはドバイサウスと呼ばれている)に将来的に巨大空港を建設すると発表済み。

でもそのDWCから70キロしか離れていない場所に、現在アブダビは巨大ハブ空港を建設中。
さらにさほど離れていない同じGCCのドーハにも巨大ハブ空港が開港している。

まあ、各国(各首長国)の覇権争いはさておき、ドバイがやり過ぎとも言える開発に邁進するのは、やはり「ドバイを世界一の都市にする」という王様の野望に他ならない。

ドバイの人口は2027年に500万人へ増加


で、すべて解決?

王様が実権を掌握する王制の国では、王様のビジョンに揺るぎがなければ、政権交代して前の政権が行った政策を転換して拡大路線から逆行し、中途半端に計画が頓挫する、または中止される、ということはない。

よってシェイク・モハメドのビジョンに従い、今後のドバイは人口500万人都市(現状のペースで人口が増えると2027年に到達するというUAE Universityのリサーチ結果がある)、もしかするとその後は1000万人以上の都市へと飛躍的に人口が増えて行くことが予想でき、それを見越した先行投資と捉えるべきなのだろう。

人口がそのくらい劇的に増えるとなると、経済規模の拡大は簡単。なので私はドバイへの投資は、不動産であれ何であれ基本的にブリッシュ(Bullish)だ。

だが最近のドバイ/UAEでは、オイル価格の低迷からインベスター・センチメントが下がり、地域の経済は必ずしも良くない。今年からはUAE初の本格的な税金であるVATも導入されたし、ドバイが大都市へと成長していく過程の1つのハードルを向かえているとも言えるだろう。

2018/04/22

Dubai Parks and Resorts(ドバイ・パークス&リゾート)で遊ぶ

我が家から車で10分足らずの場所に、ドバイ・パークス&リゾートという3つのテーマパークが合体した一大リゾートが所在する。

Dubai Parks and Resorts

たまたま知り合いのインド人からテーマパークのチケットをもらったので家族で行ってきた。

ドバイ・パークス&リゾート

我が家では、このドバイ・パークス&リゾートには恐らく5回以上は行っている。近いからね。 同じ敷地内のアウトレット・ヴィレッジ・モールを入れると多分10回位。

大体いつもは遊園地には入らずエリア内のレストランで食事をし、ちょっと散歩して帰ってくるのが通常のパターンだが、今回はテーマパークにも行ってきた。

テーマパークに行くのは今回が2回目。

初めてテーマパークに行った昨年の1回目も、実は同じインド人にチケットをもらったのだった。(自分でお金を払って行ったことがない。)

べつに彼は業界関係者ではない。懸賞チケットに当たる名人なのだ。そして今回は彼の家族分が当たった上にさらに2枚のチケットが当たったため、我が家におすそ分けしてもらったという次第。

ところで、前にも映画チケットを貰ったりとこの知り合いのインド人の懸賞当たりっぷりは並外れてはいるものの、ドバイではこの懸賞みたいなものに当たる確率が結構高いのではないかと個人的に思っている。

ドバイ空港の「高級車くじ」や「1ミリオン・ダラーくじ」の確率も、1/1000と通常の懸賞にくらべて高い。

同様に私自身も去年、iPhone72台に当たる、という経験をした。

またまたiPhone7が当たった

 何かとくじに当たりやすい設定は、夢を売るドバイならではと言える。

今回、ドバイ・パークス&リゾートでは実に9000人にチケットを配布したらしい。

3つのテーマパークが一同に介する超巨大遊園地施設


このドバイ・パークス&リゾートの中心に位置するのは、我が家でもよく食事に出かける、古いフランス風の町並みを再現した、レストラン/カフェなど飲食業を中心とする商業エリアの「リヴァーランド」。

ドバイ リバーランド

商業施設の出来栄えでは評価が高いMeraas(メラーズ)が造っただけあって、なかなか完成度は高い。

ドバイ リバーランド




そのリヴァーランドを囲むように、

  • モーションゲート・ドバイ 
  • ボリウッド・ドバイ 
  • レゴランド

の3つのテーマパークが所在する。現地の宣伝によると近い将来アメリカのシックス・フラッグスもオープンするらしい。

というわけでドバイ・パークス&リゾートは、それら3つ(近い将来4つ)のテーマパークと、隣接するLapitaという名前のリゾートホテル。そしてさらに、アウトレット・ヴィレッジという巨大モールが一箇所に集まった、一大レジャー施設なのだ。

もらったチケットは3つあるテーマパークのうち2つのパークで使える。実際買ったら1日2遊園地チケットはAED285(およそ8350円)・・・

高い。

テーマパークは巨大なので、施設内はトラム型の電気自動車で移動する。

トラムとバスが大好きなマイサン(My Son)は、ドバイ・パークス&リゾートに来ると、いつもトラムから降りたくないとダダをこねる。なので過去には1時間以上この移動用トラムだけに乗っていたこともある。

今回はテーマパークで遊ぶ(遊ばせる)のが目的なので、「テーマパークにもっと楽しい乗り物があるよ」と説得し、シブるマイサンを連れてまずやって来たのは・・・

子供向けのレゴランド・ドバイ


9月でまだまだ暑かった前回来訪時は、日中はレゴランド内のウォーターパークで遊び、日が暮れた後にMotiongate(モーションゲート)に行ったのだが、今回は暑さもしのげる程度だったので、午前中からレゴランド本体で遊ぶ。

「9,000人分のチケットが当たった」という事で、何処に行ってもスカスカなドバイとは言え、結構混でいるんじゃないかと思いつつやって来たレゴランド。

レゴランド・ドバイ

朝はかなりスカスカ。

トラムから無理やり降ろしたマイサンの希望を叶える為、まずはデュプロの機関車の乗り物に乗せる。
一周回った後、マイサンが「降りたくない」とダダをコね、「空いているからいいよ」と係の人に言われて乗ったまま4回も回ってしまった。

係の人に聞いてみると、子供向けのレゴランドとは言え、2才児が乗れるライド(乗り物)はほとんど無いことがわかった。せっかく来たのに残念。(今回はタダだが。)

ところでドバイのレゴランド。

パーク内のどのセクションに行くにも、ドバイの主要なエリア(街中)をレゴ(LEGO)で再現した巨大なドーム内を通って移動する造りになっている。

レゴランド・ドバイ



ここを通りかかったところ、レゴで作った建物の間をバスやドバイメトロが動いているのを目にしたマイサンが、いきなりオタク・クオリティを発揮。レゴで作られた乗り物を見て大興奮。

そしてレゴ・コーナーで何を作るでもなくレゴをハメ込むのに夢中になる。

ライドになんか乗る必要はなく、レゴで作った乗り物を見ているだけでよかった。(これだけで楽しむのは実際にお金払っていたらかなりの無駄だが。)

どうもマイサンはオタク・クオリティが高そうだ。今後の人生、オタクを活かした立派な大人に成長するよう、暖かくサポートしてあげたいと思う。

レゴランド・ドバイ

一方、子供だけでは無く大人でも楽しめるライドが多いのが、たぶん・・・

Motiongate Dubai


もう1つの遊園地、ボリウッド(インド人人口の多いドバイでも絶大な人気のインドの映画産業をボリウッドと言う)に対して、ハリウッドをモチーフにしたテーマパークがモーションゲート・ドバイだ。


モーションゲート・ドバイ

モーションゲート・ドバイ内には、ドリーム・ワークスという名称の室内テーマパーク施設も用意されており、暑すぎるドバイの夏でも、一応楽しめる様に設計されている。

ドバイ ドリームワークス

レゴランドよりもライドの数が多いモーションゲート・ドバイだが、2才児(身長90cm)で乗れたのはたったの3つ。(2歳児でももっと身長が高ければ、いくつか追加で乗れる)

実際マイサンがエキサイトしていたのはメリーゴーラウンドくらいだった。
上下する馬に「乗りたい」と言うから乗せたところ、動き出した途端「降ろせ」と泣き出してエキサイトしたのだが・・・

何れのテーマパークも、2歳児が楽しむにはちょっと早すぎるようだ・・・

(今回も行かなかったボリウッド・ドバイに関してはちょっとわかりませんが、ダンスショーなどが多いようです。)

ところで夜型の人が多いドバイだけあって、夜になると多くの家族連れでリゾート内は大賑わい。

やはり9000人チケット配布のパワーは相当なもののようだった。

ドバイ・パークス&リゾート


なかなか完成度の高いドバイ・パークス&リゾーツだが、経済的には・・・・

次のページ「ドバイ・パークス&リゾートに見るドバイ・メガプロジェクト開発の行方」へ続きます。

世界を旅した旅行記をまとめたページ

2018/04/15

猫を安楽死させる。そして尊厳死について考えた。

10日前に安楽死させた猫が火葬されて灰になって帰ってきた。

今年の夏で19歳を迎える目前で、私と連れ添ったのは実に18年以上。この猫を飼い始めた時は私もまだ20代独身で、まだ20世紀=前世紀だった。

当時まだ学生時代。ニューヨークのドミニカ人居住区、今思えば非常に汚いマリファナ臭漂うアパート5階に住んでいた私の部屋の前で、夜中にバイトから帰ってきたら凍えて(かつウンコして)いるのを発見したのが最初の出会いだった。

最初は「なんて汚ねぇ猫だ」と無視して寝たが、「今日は寒いからあの子猫は明日には死んでいるかもしれない」と思うとなかなか寝られず、ドアを開けて万が一入って来たら入れてあげようと思い、ドアを開けたら速攻で入ってきやがったのが始まりだ。多分相当寒くて(本能で)死んでしまうと思ったのだろう。

茶色い毛、そして作曲学科の学生で当時チャイコフスキーにハマっていた私はこの猫を「ちゃいこ」と名付けた。

猫 安楽死

そして19年弱。

私は今ではすっかりナイスミドルになって子供も出来た。この猫と連れ添った年月を考えると実に感慨深い。

最初は近所のチャイニーズ・テイクアウト・レストランのセサミチキンを奪い合って啀み合い、いつの間にか家族のようになり、私は当時のガールフレンドと結婚し、私のドバイ移住に伴い連れてきて、さらにその後(猫が)悪性の乳がんになったが大手術で復活し・・・といろいろあった。

20代当時、やりたい事をやりたいようにやっていた私は、「ファミリー?ケッ!」という感じだった。そんな私に家族クオリティを芽生えさせてくれたのは、とにかく凶暴だと評判だったが、何故か私だけにはなついた、この猫だった。

ちゃいこは私にとってはほんとうに「招き猫」だった。

愛(ラブ)があれば生きていける


犬や猫など動物を飼って学ぶ/発見する/体験することといったらなんだろうか。
私が思うに「ご飯と愛(ラブ)があれば生きていける」それを地で行く純粋さではないかと思う。

私が自分で言うのも何だが、うちの猫はとにかく私の事が大好きだった。それはもはや「無償の愛」とも言えるレベルのもの。
例えば仮に、私が職無しになって仕事もせず、家賃も払えず歌舞伎町をフラつき路上生活を始めたら、たぶん妻は呆れて子供を連れて出て行く可能性が高いが、この猫は最後まで一緒について来るに間違いない。

そんなレベルの無償の愛なのだ。

安楽死という選択


安楽死をさせた日、動物病院へ連れて行くまでは安楽死させることは考えていなかった。

ただ、ここ3ヶ月ほど、動物病院には1〜2週間ごとにずっと通っている状態で、猫の体調が良くないことは明らかだった。

もともとは2014年(15歳時)に糖尿病であることがわかり、それ以来毎日のインスリン注射が欠かせなかった。
2年ほど前からは、腎臓が徐々に悪くなっていく慢性腎不全で治ることはないと言われていたし、ここ1年位は心拍が不安定とも言われ、耳も聞こえないようだった。

でも相対的に元気で、行動範囲は狭まってはいたが、ごはんはよく食べたし、かつおぶしやツナ缶に対する情熱もまだまだアツかった。
イタズラでちょっかいを出すマイサンには、幼児であることなど容赦なしで噛み付いた。

そんな感じで、だましだまし20歳の大台まで生きるんじゃなかろうか、と思っていたのだが・・・
過去3ヶ月位で様子は変わった。

まずは耳にウィルス性の感染症がおこり、その後目にも感染症が移ったようで、治療をしても一向に良くならず、そのうち(多分感染症で)後ろ足が思うように動かなくなってベッドにも乗れなくなり、そして手も思うように動かせなくなってうまく歩けず同じ場所をぐるぐる回るようになり、最後にはトイレにも行けなくなってオムツ生活。という状態だった。プライドが高かったのでオムツは相当ショックな様子だった。

糖尿病なので体全体がウィルス感染症で蝕まれていったのだろう。
もう近い内に最後が来るな、という覚悟はできていた。

そんな感じで希望は捨てていなかったものの、なすすべもない、という事を感じつつ病院へ連れて行った。

獣医さんも猫の様子を見て曰く、治療を希望するなら続けられるが良くなっていくのは難しいだろう、という話だった。
そこで、苦痛だろうから「楽にさせてあげる」という選択肢もある、という話が出た。

正直私はその時まで安楽死ということは考えていなかったのだが、獣医さんからその言葉が出た時に、すでにその用意が私の中でできていた事を自覚した。

最後の2週間ほど、猫は休むときも頭をなかなか横に出来ずつらそうだった。

そして過去15年以上、私が寝る時に合わせて毎日欠かさず枕元へ来て一緒に寝るのが習慣だったのだが、ベットに乗ることが出来ず、枕元に来たくて何度もトライしては転げ落ち、最後はすごすごと諦めるその姿が実に悲しかった。

そして拾って枕の横に置いてあげるのだが、ちょっと動くだけでうまく体のバランスが取れずベッドから転げ落ちてしまう・・・

可愛そうでしかたがなかった。

そんな事を振り返りながら、もうその場で楽にしてあげることを決めた。

診察室の中で、家に帰りたそうに一生懸命同じ場所をよろよろぐるぐる回る猫を前に、私と妻は泣いた。(その隣でマイサンはカードゲームで大喜びだったが。2歳児だから。)

そんなわけで、猫は奥へ運ばれて気分が楽になる薬を投与され、最後の薬を投与する注射口をつけられて戻ってきた。
我々に見守られ、まず麻酔の様な薬を注射された後、家族皆に看取られつつ心臓を止める注射を打たれた。

その後数日。そのまま残された猫のご飯台を眺めながら、

その時点での安楽死という自分の判断が果たして正しかったのか


と頭の中で葛藤した。早く決断しすぎたのではなかろうか、と。

体全身が感染症に侵されていたが、猫が苦痛と感じていたかどうかは正直わからない。

治る希望は持てなかったが、最後までかつお節ののったごはんを食べ、私にナデナデされることに喜びを得ていたかもしれない・・・そんな事も考えた。

でも結局私の結論はこうだ。

猫は人間と違うので多分自分の「死」について考えることは無い。
だから心臓が止まるその日まで、ごはんを食べ、無理にでも生きようとするに違いない。例え病気で苦痛であっても。

そこで尊厳死に関わる「クオリティ・オブ・ライフ」という話になってくる。

私自身、自分が人生の最後を迎える時は「安楽死による尊厳死」は現実的な選択肢だと思っている。

すでにその辺の考え方が進んでいるアメリカの一部の州や、オランダ、スイスなどヨーロッパのいくつかの国では尊厳死は合法化されているが、保険料が破綻していく国々の都合も相まって、今後多くの国で合法化されていくのではないかと思う。

私自身もこのクオリティ・オブ・ライフがもはや達成されなくなった時、徐々に沈んでいく船の上で、かついつまで続くかわからない苦痛の中で、まわりに迷惑をかけつつ沈没を待つよりも、「もうすでに人生を達成しきった」と判断した時点で自らの意思で決めることができるオプションを持ちたい、と考えている。

そんな事を考えながら、結局この猫を受け入れたのは私。
そして私のポリシーに基づいて自分で最後の責任を持った。ということで、いろいろ考えず「良しとしよう」という結論に至った。

今は私の枕元に遺灰を置いているが、49日経ったら海に流してあげようと思う。R.I.P ちゃいこ。

この記事をシェアする

フォローする

 photo facebook_zpsdrko1l06.png  photo twitter_alt_zpssfdnlubz.png  photo linkedin_zpstdiv3dy6.png  photo google_plus_zpssnmgvnwz.png  photo youtube_zpsteblxlyi.png Consul Blog Feed photo feed_zpsipfsv36n.png