この記事は2018年1月にVAT(付加価値税)が実際に運用される前に書かれたコラムです。一部当時の予想を含んでおり、実際とは異なっている点もあります。
運用後の詳しい情報は以下のリンクを御覧下さい。
VAT(付加価値税)に関する情報|ワイズ・コンサルタンシー
時が経つのはとても早い。(子供が生まれてからは特に・・・)
実際の運用開始を8ヶ月後に控え、純粋なスペキュレーションを含め現在さまざまな情報が出てきている。
UAEのVAT導入のフレームワーク(Educated Guessによる)
UAEのMinistry of Finance(財務局)が最近様々なオープン・ワークショップを行っており、法律の根幹となるであろう様々な事項が一般にシェアされはじめた。
そこで、ここでは弊社で耳にした(目にした)いくつかの事項についてまとめたい。(あくまでもウワサの範疇で、実際の運用がどうなるかはまだ未定)
- 付加価値税率は5%で、一部のアイテムにはゼロ%。
- 年間AED375,000以上(1000万円程度)の売上がある企業が対象で、年間AED187,500以上の会社は自由意志にによる申告
- VAT専用のポータルサイトが2017年10月1日にオープンするだろう
- 付加価値税の支払いは四半期ごとが濃厚
- VAT税の登録と支払いは電子決済にて
- 医療と教育セクターは非課税
- 不動産セクターには特別なルールが設けられる可能性
- ファイナンシャルセクターとフリーゾーン会社については特別なルールか設けられる予定であるが、今のところ詳細は未定
- GCC諸国内の貿易取引に関しては、特別なルールが設けられる予定。
ここで上記から個人的に気になるものを幾つかピックアップしたい
「一部のアイテムにはゼロ%」
前回VATに関するコラムを書いたときには、付加価値税の除外アイテムリストの中に「自転車」というのがあって、「え?」と思われた方も多いかもしれない。
これは何かと運動不足で糖尿病患者の多い状況を打破したい、というUAE政府の思惑ならでは、という感じがしたのだが、視点は違うが最近ドバイでは「ドバイを世界一のスマートシティにする」という目標を掲げており、自転車を始めクリーンエネルギーに関連する事業に関心が高い。
それらに関連する事なら何でも優遇されて行きそうな勢いで、やはり自転車が対象外になってもおかしくない。
自転車以外にも、例えば「テスラなどの電気自動車はVAT対象外」などとなっても驚きではない。これは完全な私のスペキュレーションだが。
「年間AED375,000以上(1000万円程度)の売上がある企業が対象」
よく会う会計会社からは「年間AED3,750,000以上の売上がある企業が対象」 などと聞いていて、最初はある程度の規模の会社からのみ徴収すると思っていたのだが・・・
「年間AED375,000以上の売上」だとの私の会社も余裕で対象になってしまうし、この額が本当なら、UAEに存在する、まともに営業する多くの企業が影響を受ける法律になる事は間違いなさそうだ。
「ファイナンシャルセクターとフリーゾーン会社については特別なルールか設けられる予定」に期待したいところだ。
「不動産セクターには特別なルールが設けられる可能性」
これは例えば「1軒目の購入には非課税」とか、「商業物件には課税するが、住居物件には非課税」といったような内容が議論されているらしい。
ドバイ不動産市場では、富裕層を中心に何軒も物件を持っているケースが多い。マジで100軒とか。
なので1軒目の購入には非課税であるが、2軒目からは5%の課税、となると結構不動産セクターへの悪い影響は大きいのではないかと思う。
今後の方向性
ざっと以上であるが、UAEでは税金とは言っていないが税金のような徴収が実はすでにいくつもある。
例えば額の大きなものでは、
- 法人のライセンス料
- 不動産購入時のドバイ不動産局に対する4%の登録料
などなど。
例えばフリーゾーン法人は、アクティビティ(業務)に応じて年間結構な額のライセンス料を支払うが、ここにさらに売上に対して付加価値税がかかると、どう考えても二重取りのように見える。
不動産購入も同様で、ドバイでの不動産購入は、それでも固定資産税や相続税などがないため他国よりはよほどシンプルではあるが、4%の不動産局への登録料は「登録料」名目では高めであり、さらにその上付加価値税までも政府に収める、ということになるとこちらもやはり二重取りに見えてくる。
というわけで、今後「今まで実質的に税金」だったコストの調整も進むであろうし、それらのバランスによって法律は決まっていくのだろう。
さしあたり、所得税、法人税、固定資産税、相続税などは無いので、富裕層を惹き付ける国である地位に揺るぎはないが、強烈な暑さから必ずしも生活しやすい場所ではないので、より多くの富裕層にドバイへ来てもらうには、あくまでも高い節税メリットはキープしつつ、財政安定との間のバランスのとれた税制、というのが今後の課題となるのだろう。
まだまだ「所得税」「法人税」「固定資産税」「相続税」無しのドバイへいらっしゃ〜い。
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