まだまだ実現するかどうかは未知数。
UAEを始めとするGCC諸国ではオイル価格の下落が激しい昨年後半から、盛んに直接税導入の議論が行われている。
2016年に入り、隣国オマーンではすでに15%の法人税導入を発表した。(以前のオマーンでは30,000オマーンレアル=USD77,922以上の利益のある会社のみに12%の法人税が課せられていた。)
GCC諸国では、これまでもVAT(付加価値税、日本の消費税の様なもの)を中心にした直接税の導入の話はかれこれ10年ほど前からあったのだが、最近のオイル価格の下落によりこの動きが一気に加速した様子だ。
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VAT=付加価値税に関しては、遅かれ早かれ導入されるのだろう。購買意欲の高いUAE居住者にとっては、日本と違い消費税導入くらいでは景気にはさほど影響しないのではないだろうか。
しかもヨーロッパ人居住者にとっては5%導入したところで自国に比べたらまだまだ安くて魅力だ。何せヨーロッパのVATは軒並み20%台だからだ。
注目かつ気になるのは法人税(法人所得税:CIT=Corporate Income Tax)の方だ。(所得税の導入は予定していない)
UAEではこれまで、銀行業とオイル会社以外の法人は法人税を取られることは無かった。(ただし「ライセンス料金」という形で実質的に税金のようなものは払っていたが。)
「オイル以外の財源を確保する」ということでは直接税の導入を評価する声もあるのだが・・・
それは建前だろう。
そもそも「法人税が全く無い」からUAEに現地法人を置いている企業/インベスターも相当数いるわけで、法人税の導入方法によっては無税/税金が安い魅力が半減してしまい、海外からの投資が先細りする、などの痛手が無いとは限らない。
ちなみに現在のところ、ローカル会社への法人税の導入、という方向がまずあり、フリーゾーン会社はフリーゾーンごとに任せる、という方向で議論が進んでいるようだ。
ん?UAEのフリーゾーンは50年間の法人税無しが保障されていたはずだが・・・
それはさて置き、フリーゾーンでは法人税などまったく無い代わりに、結構な額のライセンス料金を支払う(とは言っても数十万円という単位ですが)、という方法を取っている。
収支がマイナス(赤字)の会社でもライセンス料金は支払わなければならない。
よって言ってみればこのライセンス料金は「登録した会社から広く浅く集める法人税」とも言える。
例えば日本では赤字の会社は所得が無いので法人税を払えない、ということで相当数(日本に存在する全法人の半数以上?、年によっては70%以上?)の会社が法人税を払っていないが、UAEでは小額ではあるが全ての登録されている会社から費用を徴収する。
そんなUAEのフリーゾーンで、結構な額のライセンス料金に加え、さらに法人税も取る、という事では理解が得られないだろうし、それではUAEのフリーゾーンに法人を設立すること自体に魅力がなくなってしまう。
ところでUAEのフリーゾーンは30程度存在するが、法人税導入を考えた場合、その導入が有力と思われるのはまず大企業の登録が多いジュベルアリ・フリーゾーン(JAFZA)やドバイ・エアポートフリーゾーン(DAFZA)ではないだろうか。
これらのフリーゾーンでは大企業が多く、営業利益の高い会社が多いと思われる。ライセンス料金を取らずに法人税に切り替えることによって財源アップが図れそうだ。
それは私の勝手な見立てによるものだが。
逆にSMEやオフィスを持たないヴァーチャル的な会社が多いと思われる北部首長国の一部のフリーゾーンでは、法人所得税にするよりも、浅く広く(赤字企業からも)徴収するライセンス料金制の方が良い、ということになるかもしれない。
そして現在、UAEではローカルでビジネスを行う場合(例えばリテール業など)、ローカル資本51%(書面上だけで骨抜きだが)が必要だが、その辺の改正も議論に上るかもしれない。
「法人税=UAEに逆風」と考えがちだが、いろいろなオプションが出てくることで、インベスターには様々な提案ができる状況になるかもしれない。
いずれにしろ法改正があった場合には、ローカル法人設立、様々なフリーゾーンでの法人設立、それぞれの特徴がさらに明確になり、より詳しい現地の知識/エキスパートが必要となり、私のビジネスにもプラスになるのでは、とポジティブに考えようと思う。
とは言ってもオイル価格の復活によって法人税の話は無くなってしまう可能性も大いにあるような気がしますが・・・
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