この記事は2018年1月にVAT(付加価値税)が実際に運用される前に書かれたコラムです。一部当時の予想を含んでおり、実際とは異なっている点もあります。
運用後の詳しい情報は以下のリンクを御覧下さい。
VAT(付加価値税)に関する情報|ワイズ・コンサルタンシー
来年2018年から始まると発表されていたUAE初の本格的な税制度、VAT(付加価値税)だったが、詳しい内容、特にフリーゾーン法人のビジネスにどう関わってくるか、についてはExecutive Regulation待ち、という状況が続いていた。
本来は「10月に発表される」という予定だったが、結局VAT開始の1ヶ月半前のここに来て、いよいよドラフト版が公開された。
そんなわけで、内容をさらっと確認し、特に日本人が行うビジネスに該当するであろうと思われる幾つかの条項について解説したいと思う。
(私は法の専門家ではありませんので、ここに書く内容にてついては保証しません。各自でご確認をお願いします。)
まずVATの大枠について
先月からFederal Tax Authority(無理やり日本語にするなら連邦国税庁?)に登録する様に、と各方面で告知がなされていた。実は弊社もすでに申請は済ませており、登録を待っている状態だ。この登録義務には条件があり、それは以下のようなものだっだ。
- Taxable Supply (Goods or serivice)の売上がAED150 Million以上の法人:10月末まで
- Taxable Supplyの売上がAED10 Million以上の法人:11月30日まで
- Taxable Supplyの売上がAED375,000以上の法人:12月4日まで
そこで疑問は "Taxable Supply"とはなんぞや、ということだと思うが、ぶっちゃけこれはほぼすべての物品(やサービス)が入ると考えてしまって良い。Taxable Supply以外はExempt Supplyと言うが、これに相当するのは、
- 土地
- 居住不動産賃貸価格や、ディベロッパーから直で購入する不動産
- 公共交通
- 金融業の一部
などであって、殆どの日本人が行うビジネスはこれらに入らないからだ。
だがTaxable Supply全てに5%のVATがかかるか、というとそうではなくて、その中にはStandard_Rated(5%課税)とZero-Rated(0%課税)の2種類があり、特にフリーゾーン法人の立場も相まってその内容がはっきりしなかったのだが、今回のERの内容によると、カスタマーがGCC諸国に属している場合は5%の課税、それ以外の場合はZero-Ratedというのが大枠での考え方のようだ。
そこで当初言われていたことと違った内容もある。
ゲートで仕切られたフリーゾーンでもローカル会社やゲートの無いフリーゾーンと同様に課税される
日系ビジネスの多くはフリーゾーンにてビジネスを行っている。
巷では、ゲートで仕切られたフリーゾーン、例えばJAZFAやDAFZA(特に日系大企業が多い)、それからシャルジャのSAIF Zoneなど、は非課税になるのではないか(よって税制面で有利)。一方、DMCCフリーゾーンやインターネット・シティなど、ゲートで仕切られていないフリーゾーン法人はローカル法人と同様に課税されるのではないか、と言われていた。
だがその噂は外れ、ゲートで仕切られたフリーゾーン内の法人でも課税の対象となる。結局フリーゾーン法人でもローカル法人でも、かつどこで設立されたフリーゾーン法人でも同様の課税対象となる、ということだ。
これにより「同じUAE内の法人への課税」という点ではフェアだと言えるが、アクティビティ(業務)によってはかなりグレーであった「フリーゾーンでできるビジネスとローカル法人でなければできないビジネス」の境界線がいっそうグレーになり、なおかつ政府 もそのグレーな部分は想定内にした感がある。
それはさておきExecutive Regulationの内容から目についた部分をピックアップしたい。特に日系ビジネスにとっては自身のサービスが"Zero-Rated Supply"(=0%課税)に該当するのかどうか、という所に関心があるだろうと思う。
グッズの輸出
UAEを含むGCC諸国以外への輸出はZero-Rated。もちろんこれを証明するエビデンス(B/L)などは保管しておかなければならない。
例えば私(ドバイ居住者)がディーラーから車を買ったら課税5%だが、私の日本の友人が車を買って日本へ輸出されれば0%。
サービスの提供
弊社のコンサルティング費などもこれに相当するが、これは「サービスが提供された時点で、サービスの受け手がGCC諸国以外の場合はZero-Rated」とある。
なので弊社が日本の法人相手に「ドバイ市場リサーチ」などを行う場合は0%VATということになる。
だが例外があって、それはGCC諸国の不動産やアセットが絡む場合。例えば「不動産売買時のコミッション」などは、たとえ顧客がGCC諸国以外であっても5%の課税対象、といえる。
テレコミュニケーション・サービス
インターネットの発達により、日本以外から日本へ向けてインターネットで何かを配信して大儲け、などというのも珍しくない。そんなテレコミュニケーション・サービスのZero-Ratedは以下だ。
- UAEを含むGCC諸国のIT法人から、それ以外の国の法人へのサービス
- UAEを含むGCC諸国のIT法人から、それ以外の国に住む個人へのサービス
よってドバイから日本へ向けてのITビジネスは今までと同様に税制メリットを謳歌できる。
プレシャスメタル(金など)
インベストメント・クオリティ(99%ピュア)の貴金属はZero-Rated。
なので、金の原石や砂金など純度99%に満たない貴金属の売買には5%の課税、と考えられる。
その他のビジネス
細かいガイドラインは省くが、ざっくりと以下のビジネスはZero-Ratedだ。
- 教育
- ヘルスケア
以上だが、地域特性として「実際に法が施行されたが実はビジネス慣習では違うやり方が一般的」などということも起こり得る。
例えば、ドバイの不動産売買時の不動産局登録料は、法律では買い手と売り手が2%づつ折半することになっているが、実際には買い手が4%を払う。
そんなこともあるので、VATが施行されてしばらくの間は混乱もありそうだ。
話は変わるが、以前「UAEでVAT(付加価値税)を導入しても、消費意欲旺盛なドバイでは、日本の消費税導入時の様に一気に景気が冷え込むような事はないんじゃないか」と書いたことがあるが、正直言ってどうなるかは予想がつかない。
実は今のドバイ/UAEはけっこう景気が悪い。(だが地元の新聞などはそのように公には書かないのだが)
なのでさらに5%の税金がかかる、となると、例え購買意欲旺盛なドバイ居住者であっても消費の落ち込みは避けられないような気がしないでもない。
このVAT導入で、ドバイ/UAEを始めとするGCC諸国の財政も安定していく、という方向だが、今までまったくありとあらゆる税金が無かったドバイに住んでいたので、移民の増加と共に街の規模が拡大していくにつれ「ここもついに普通の国になっていくのか・・・」としみじみ思う今日このごろです。
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