ドバイで「法人設立時の外資49%まで」ルールが撤廃される
5月以降、次々に新しい方策が施行されつつある。
以下、その中から日本人にも関連するであろう項目をピックアップしたい。
アントレプレナー、医師、科学者などの居住者ビザを10年に延長
今までは、アラブ首長国連邦に居住するすべての外国人の居住者ビザは基本3年間(3年間を何度でも更新できる。 )であったが、アントレプレナー、医師、科学者など、いわゆるハイレベルのプロフェッショナルや専門職に付く人、そしてその家族には10年のビザが与えられる見通し。(まだ施行されていない。Q4から?)
これにより、ハイスキル/高所得の外国人はより安定したステイタスが得られ、アラブ首長国連邦へのより積極的な投資を促そうという狙いがある。
最近、低所得/低スキル外国人を積極的に増やそうとしているニュースが目につく日本であるが、この様なハイスキルの人材を外国から入れていく事も国際競争力を上げていく上で一考に値する方策ではないかと思う。
すべての学生に5年、優秀な学生には10年の居住者ビザを発給
アラブ首長国連邦に学びに来る日本人というのはあまりいないが・・・
優秀な学生に10年間のビザを与えるというのは、優秀な若い人材に、卒業後もドバイ/アラブ首長国連邦で活躍してもらおう、という狙いがある。
もちろんすでに「外国人労働者受け入れ」に舵をきった日本でも同様の事ができるはずで、日本の大学院で学んだ日本語を話す外国人に、日本で仕事を探すための猶予を与える(=結果、将来的に日本の高度人材として活躍してもらう)ということを考えても良いのではないかと思う。
E-Channel Systemの導入
すでに2月から導入されているE-Channel System。
これにより居住者ビザ取得までの手続き時間が早くなる、との触れ込みだが、今の所システム導入費用として結構な額(1社につき20万円以上)を取られただけで、手続き自体はまったく速くなっていない・・・
今後に期待、といったところか。
ドバイ空港にトランジット客専用の入国(エクスプレス)カウンターの設置
同時にトランジット時のビザ免除も発表されたが、すでに日本人はアラブ首長国連邦にはビザなしで30日間滞在できるので、変化を実感するのはこのエクスプレス・カウンターの設置だろう。
ドバイ経由でヨーロッパやアフリカへ向かうトランジット客が、容易にドバイ内/UAE国内に入国できることで、短い時間で観光する人を増やそうという狙いがある。
現在のドバイ国際空港は、旧市街地(デイラのゴールドスークやスパイススーク)にほど近い場所にあり、またブルジュ・ハリファやドバイモールまでもタクシーで30分以内で行けることから、トランジットがてらに観光する人も増えるはずで、ドバイのインバウントビジネスにとってはプラスだろう。
職探しをするビジターのビザを最大6ヶ月まで延長可能
これにより、仕事を探しにドバイ/アラブ首長国連邦にやってくる求職者がより余裕を持ったスケジュールで就職活動をすることが可能になる。
30日間ビザなしで入国できる日本人などの訪問ビザもこれに相当するかどうかは確認できていないが、おそらく最大6ヶ月まで延長可能になる、ということだと予想する。
このレギュレーションが導入されるのは2018年Q4から。
不法滞在者の出国ペナルティ(罰金)免除
これは日本人にはあまり関係ないと思うが、話としてはドバイらしく面白いので。
アラブ首長国連邦では不法滞在者には厳しく、在留許可期間を過ぎて不法滞在すると、毎日ペナルティが加算されていく。
このペナルティを払えないと、支払うまで収監される、という可能性もある。
よって不法滞在で罰金が払えない事が理由で、空港へ近寄れず(よって自国へ帰れず)、そのままUAEに残っている人々も結構いるらしい・・・
人によっては10年不法滞在して罰金が日本円でウン千万円、という人々も結構いるらしい。
そもそも不法滞在してしまう様な立場の人は、仕事探しに来てそのまま 居残ってしまったか、どこかで雇われ ビザ支給されてる間にトラブルに陥った 、などお金の無い立場の弱い人達が多いはずだ。
罰金による借金が日々膨らむ中、UAEを出られない(=母国の家族にも会いにいけない)、という非常に苦しい立場に置かれていたに違いない。
そこで今回アラブ首長国連邦政府は、これら不法滞在者の罰金を免除し、帰りの航空チケットさえ自分で用意すれば、母国へ帰れるように取り計らった。この法律はすでに施行されており、移民局には数百人の不法滞在者が出国の手続きのために訪れているらしい。
未亡人、そして離婚した女性(主に専業主婦)の滞在延長
今までは、専業主婦ステイタスでドバイ/UAE居住中に離婚して独身となった女性は、1ヶ月以内に仕事をゲットして雇用主からビザを支給されない限り、UAEから出ていく必要があった。(未亡人は保持しているビザの期間中は滞在できた。)
外国人移民に対するビザ発給がとてつもなく厳しい日本は別にして、西側先進国的な視点では人権的にありえない待遇だった。
これは単純に「男尊女卑」と言うと若干語弊があるが、 「夫が妻をスポンサーする」という、イスラム的価値観で出来上がった法律から来た女性には厳しいレギュレーションだった。
よって今までは、子供をドバイの学校へ行かせ、日々の主婦仕事をこなしていたお母さんにとっては、離婚で夫が出ていってしまった場合、突然すべての人生プランを変更しなければならないことになり、非常に負担が大きかった。
離婚という疲弊するイベントの直後、直ちに子供をドバイの学校から退学させ、家を引き払い、国際引越をアレンジし、家族全員で出国し・・・と、それらを1ヶ月以内にこなさないと移民法違反となる。
もちろん無事にUAEを出国しても、行き先の国で仕事探しも含め人生をスタートし直さないといけない。
今までのレギュレーションでは、どうしても男性におんぶにだっこという状態になり、女性は弱い立場に追い込まれていたわけだが、女性の社会への進出が当たり前になっているグローバル的な流れからすると、今までのやり方では古いと判断され、リフォームとなったのだろう。
今後は出国まで1年間の猶予ができることになり、この期間を利用して就職したり、自身のビジネスを立ち上げるなどして、自立した女性がドバイに残ってキャリアを形成していくことが可能になる。
ビザ取得時のBank Guaranteeが免除になる?
アラブ首長国連邦でビザを取得する場合、最初の取得時にAED3000(約8万円)のデポジットを取られていたのだが、この慣習が停止される予定だ。(いつからかは未定)
移民法リフォーム総括
というわけで、以上が 日本人にも影響がありそうなドバイとアラブ首長国連邦のビザ変更点だが、いずれも外国人にとっては好ましい内容だ。
また、このリフォームは「外国人に開かれたオープンなマーケットだ」という事を示すことにもなり、より一層の外資の受け入れ、優秀な人材の受け入れを促進したい、という意気込みが感じられる。
とにかくドバイ&アラブ首長国連邦はやるべき改革の実行が早い。(そしてうまく行かなければ直ちに元にも戻す。)
それは今後のドバイ/アラブ首長国連邦経済にも良い影響があると思われる。
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