オイル価格の低迷により、長らく不調なUAE経済であるが、それを打破すべく新たな政策がUAE政府により閣議決定された。
外国人の居住者ビザ取得と、ローカル法人の設立に関してだ。
ドバイを含むUAE(アラブ首長国連邦)では、フリーゾーン以外で「外国資本100%」のビジネスを行うことはこれまで不可能であった。だが今回の閣議決定により「大株主がローカル資本でなければならないルール」が撤廃される方向となった。詳細は今年中に各首長国の経済局がレギュレーションを纏める方針だ。
現在のローカル法人設立ルールについてはこちら↓
ドバイ ローカル会社設立、LLC法人設立
中東諸国の中では、情勢不安定化によって外資の流入が滞ったバーレーンがすでに「外資100%ビジネス」を許可しているが、UAEもグローバル化の流れに沿い「外資100%ビジネス許可」に舵を切ることで国際的な競争力を高めるのが狙いのようだ。
建国の父を敬うシェイク ・ザイード・イヤーの今年、大きな政策変更を発表した |
インベスター(投資家)を含む一部外国人の居住者ビザが10年に延長
外資100%のローカル法人の話の前にまずはビザについて書きたい。
今まで、外国人のUAE居住は、3年(または2年)のビザを永遠に更新し続ける、という形で長期滞在する方法だった。
なので生まれてからずっとドバイに住むインド人は結構いるが、これらの人々は生まれたときから「3年間のビザをひたすら延長し続けて現在40歳」という人も少なくない。
ビザ更新の度にそれなりのビザ費用がかかるし、実際3年は結構早くやってくるので、その都度ビザ更新をするのは結構面倒くさい。(まあ、外国人へのビザ発給が異様に厳しい日本よりは、遥かにビザ取得が簡単なシステムではあるのだが。)
それが今回のレギュレーション変更により一部の外国人はビザ期限が10年となる。
居住者ビザが10年に伸びる該当者は以下だ。
- ビジネス・オーナー
- 高い技術を擁する医師やエンジニア、研究者など
- 優秀な成績の学生
よってビジネス・オーナーである私の居住者ビザも、次回更新する際は10年ビザとなるのだろう。
上記のリストからは、優秀な外国人を取り込もうという狙いが見て取れる。「優秀な外国人を取り込むことで国を発展させる」という点では、ご存知シンガポールがこの方策の成功例だ。
10年に延長される居住者ビザで得られる立場の安定と、「法人税・所得税が無い」という税制メリットによって、アントレプレナーシップ旺盛な人材を取り込んでいこう、という意気込みが感じられる。
今までUAEでは、アントレプレナーシップ旺盛な人材は、外資100%でビジネスをスタートできるフリーゾーンを中心に誘致を行ってきた。
だが・・・
100%外資のローカル法人設立が可能に
フリーゾーンとローカル法人の違いについてはここでは言及しないが、興味があればこちらへ↓
ドバイ・UAE 会社設立|ワイズ・コンサルタンシー
今まではドバイモール内で何かを販売したいとか、ドバイ居住者(またはUAE居住者)に向けて日本製品を売りたい、といった場合はUAE人をマジョリティ資本(スポンサー)としてドバイ経済局に法人登記する必要があった。これが今回の閣議決定で撤廃される意向となったのだ。
だがレギュレーション詳細はまだ決まっていないので、ドバイ・UAE経済に効果があるかどうかはルール次第だ。
外資100%許可によって、「金はまったく出していないが、書面上大株主であるUAE人ローカルスポンサーが、実際には資金を出した外資の会社や会社の所有物を乗っ取ってしまう」といったリスクは排除される。
だが今後のレギュレーションが、引き続きUAE人を仲介しないと法人登録が出来ない様なルールであった場合、何もしないUAE人エージェントに毎年高い費用を払わなければならない、といったケースでは、自由度という点では現状とあまり変わりがない、といった結末もあり得る。
それから、必ずしも働き者とは言えない(しかも給与の高い)UAE国籍者を必ず雇わなければならない、といったルールが適用されるようだと、国際的競争力、という観点ではかなり厳しい。
なのでこの レギュレーションへの 評価は、詳細が決まり、どの様に運用されるかを待ってからになるだろう。
オフィス空き物件の解消になるか
この閣議決定のニュースの後、早速DFM(ドバイ株式市場)に上場しているすべてのディベロッパー株が上昇に転じた。
ドバイによく来る人、すでに住んでいる人はご存知と思うが、ドバイ内のオフィス物件には空きが多い。
UAEではフリーゾーンはゾーン内のオフィスしか借りられないので、ドバイ内の通常のオフィス物件を埋めるにはどうしてもローカル法人が爆発的に増える必要があるのだ。
いっそうフリーゾーン 法人とローカル法人の境界があいまいに
過去のVATに関するコラムでも書いたのだが、
ついにVAT(付加価値税)詳細が姿をあらわした。
2018年から導入されたVAT(付加価値税)は、すでにフリーゾーン法人にも例外なく履行されており、ローカル法人との大きな違いはない。
ローカル法人の外資100%への開放を受け、なお一層フリーゾーン法人とローカル法人の区別が曖昧になってくる可能性が高い。
今までは多くの外国資本が「外資100%」を理由にフリーゾーン法人設立を好んでいたのだが、ローカル法人で外資100%がOKとなった場合、これから決まるレギュレーションの詳細によっては、フリーゾーン法人並に自由度の高いローカル法人を設立できる可能性がある。
そうなってくるとフリーゾーンとの違いは、
- オフィスや倉庫、またはヴァーチャルオフィスなどの物件オプション
- 税関の 扱い
という2点の違い くらいしか見当たらない。多くの会社がフリーゾーン法人からローカル法人へ転身するだろう。
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