2006年からDubai Municipality(ドバイの市庁舎)では"one villa, one family(1つのヴィラに1家族)"なるキャンペーンを行ってきたが、2008年の夏ごろからとくにこれに力を入れ始めた。もともとヴィラタイプの住宅は3〜6ベッドルームの大型の住居が多く、これを単身者がシェアして家賃をできるだけおさえるようとするExpatが多かったのだが、Dubai Municipalityはこれらの人々を上記のキャンペーンを口実に追い出しにかかったため、多くのExpatがアパート(フラット)タイプの住居に移動し、より高い家賃を払わなければならなくなった。
夏以降にはヴィラ・タイプのみならずフラット・タイプのシェアも禁止されて(法的効力があったのかどうかは定かでないが)、私の知ってる中低所得のインド人Expatもアパートを出なければいけないという話をしていた。なにかと金満な話題が日本で放映されるドバイだが、ドバイには金持ちしかいないと思ったら大間違いだ。実際ドバイの経済を支える多くの人々は他の都市と同じく中低所得者層だから、これらの人々は給料の半分〜2/3を家賃に当てなければならないという状況になってしまった。
ところが今回のフリップフロップ。Municipalityは「その件に関しては"Miss understanding"があった。広さが十分あれば1つのヴィラに1家族以上が住んでも構わない」と言い始めた。要は1ヴィラに30人とか住まなければシェアするのは構わん、ということらしい。早い話がついこのあいだまではダメだったことを今日からは良いとしたわけだ。
とにかく‥‥
ドバイではこの手の話がとにかく多い。なんというか「クレディビリティ(Credibility)」という概念がまったく感じられないのだ。たとえば最近の出来事で思い出してみると‥‥
・「ドバイ不動産を買ったらUAEヴィザがもらえる」はずがもらえなくなった。(でもナヒールなど一部のディベロッパーの物件ではもらえたりすることもある)
・日本人を含むヴィザ無し入国の期間はもともと60日だったが、昨夏ころ移民局が30日に変更した。その2ヶ月後にはオフィシャルな発表なしにまた60日に戻っていた。(でも入国スタンプは「30日」のままで移民局に問い合わせると「30日」のスタンプは「60日」という意味です。というわけのわからん説明をされる。)
なんというかいい加減というか、もうちょっと熟慮してから発表するなり実行するなりできないんだろうか、ここの人たちは。これがまた政府レベルだけでなく民間レベルでもそうだからまいってしまう。私のように日本人のクライアント相手に商売をするとなるとこれを説明するのが非常に困る。きっちりしている日本の感覚ではありえないことがここではよくあるからだ。
今回のヴィラの件も、不景気とあいまってヴィラの入居者が減ってしまいあわてて方向転換したように思える。一時、年間家賃AED220,000だったスプリングスのヴィラは150Kまで値下がりしているらしい。とりあえずドバイの賃貸価格は異常な高さだったので安くなったのは良いことではある。
ところで「クレディビリティ」と言うことでいえば、不景気な今だけにドバイのこのいい加減さ(方向転換の早さ?)がいい方向に作用すると期待したい。私はアメリカのCNBC(ビジネス・ニュース専門チャンネル)をよく見るが、これから世界不況に直面するにあたって最近よく耳にするのは「日本の”失われた10年”を繰り返してはならない」ということだ。とにかく日本は政策実行が遅い。そしてその政策がコケたら政治家は責任問題やら何やらに必死で、肝心な政策実行にはさらに時間がかかってしまう。
というわけで、政策がコケたらすぐ撤回。王様を代えるわけにもいかないから責任問題で時間がかかることもなし。というドバイの早期景気回復に期待したいですね!