ドバイ不動産市場は、オイル価格低下によるインベスターセンチメントの低下にもかかわらず底固さを見せており、今年のCityscapeも盛況だったようだ。
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最近、中東最大のある銀行の担当者と会った際、ドバイの銀行全般の話として、とにかくカネ余りの状態だ、と聞いた。
混乱する近隣中東諸国のマネーが避難先としてドバイへ集まってきているからだ。
特に最近はクーデター未遂事件が起こったトルコから、かなりの資金がドバイへ流れてきているらしい。
他にも、とにかく国を挙げての低金利政策でカネ余りジャブジャブの先進諸国のマネーも来ているのかもしれない。
というわけで、ドバイ不動産に対するインベスターのニーズも永遠に続きそうな勢いだ。もちろんドバイにとってはグッドニュースだ。
では今年もシティスケイプを視察してきたので、最近の代表的なディベロッパーの動向を見てみたい。
エマール(Emaar)
押しも押されぬドバイNo1ディベロッパーがエマールだ。
エマールは過去にドバイ・ダウンタウン、ドバイマリーナ、エミレーツヒルズなど、ドバイを代表する巨大不動産プロジェクトを成功させ、それぞれ評価が高い。
エマールが近年力を入れているのが、開発余地が残り少なくなりつつあるダウンタウンエリアの新規プロジェクトと、新たに巨大プロジェクトを計画しているドバイクリーク沿いのクリーク・ハーバー。そしてこちらも評価が高いディベロッパー、メラーズ・ホールディングス(Meraas)とのJVにて開発するDubai Hills Estate(ドバイヒルズ)の3つのプロジェクトだ。
だが、今回のシティスケイプではちょっと毛色の違うプロジェクトをローンチした。
それはEmaar South(エマール・サウス)というDWC(ドバイ・ワールド・セントラル=アル・マクトゥーム空港)の隣に開発するゴルフヴィラ・コミュニティだ。
価格も2BRのタウンハウスがAED700,000(約2000万円)から、と市街地よりかなり安い価格を出してきている。SQFあたりの価格ではダウンタウンの1/4程度だ。
当然エマールということで、その2BRタウンハウスはシティスケイプ最初の2日間で完売・・・
私個人的にはDWC(ドバイ・ワールドセントラル)のあらゆるプロジェクトにはかなり懐疑的だ。
世界一大きな空港を建設すると謳っているアル・マクトゥーム国際空港は、今のところ日本の地方空港ばりに小さく、周りには何もないし、現在のドバイの中心地からはかなり遠く、Expo 2020の会場となった後はまた更地状態が続くのではないかと思っている。
だがエマールがコミュニティを造るとなると、若干話は別だ。
おそらくドバイ政府からエマールにドバイ・ワールドセントラルエリアでの開発を進めるように要請などがあったのかもしれない。
少なくともこのエマール・サウスはゴルフ・コミュニティなので、たとえDWCの開発は中途半端に終わったとしても、「かなり郊外ではあるが、ゴルフ場に隣接した閑静なヴィラ・コミュニティで家賃は安いから住んでもいいかな」というリスクヘッジはある。
完全な投資目的であればリスクがあるが、ジュベルアリフリーゾーンなどには一応ストレスが無い通勤範囲内だし、実際に安い家賃でゴルフ・コミュニティに住もうとする人々への一定の需要はありそうだ。
このエマールサウスが、今ひとつ盛り上がりに欠けるDWC(ドバイ・ワールドセントラル)のゲーム・チェンジャーとなり得るかどうかはこれからが見ものだ。
DP
DPことドバイ・プロパティーズ。
ドバイプロパティーズはドバイ政府100%出資の会社ドバイ・ドバイホールディングス傘下の不動産ディベロッパーで、エマールと並び評価の高い会社だ。
ドバイマリーナのビーチフロントに位置するJBR(ジュメイラ・ビーチレジデンス)や、今ひとつパッとしないセブンイレブン・ドバイ1号店が所在する、ビジネスベイのBay Square(ベイスクエア)を始めとして多数のポートフォリオを持つ。
このDPが現在最も開発に力を入れているのはカルチャーヴィレッジと呼ばれるクリーク沿い、現在ヴェルサーチ・ホテルが所在するエリアと、ドバイランドのMundon(ムドン)とSerena(セレナ)というヴィラコミュニティ、そしてビジネス・ベイだ。
このMundon(ムドン)とSerena(セレナ)が開発されているエリアは、ドバイ郊外で現在最も開発が激しいエリアで、DPの他にもエマールのアラビアン・ランチズ2、ダマックのAkoya、ドバイ・サステイナブルシティなど「本当にこんなに需要が生まれるのだろうか???」と思ってしまうほどの激しい開発ぶり。
ただしドバイの人口も過去10年間で100万人以上増えており、今後も500万人級、1000万人級のメガ・シティを目指しての開発なのだろう。何しろ王様が世界一の都市にすると言っているのだから。
そしてこのプロジェクトは現在のMall of the Emiratesの海側のあまり利用されていない土地に開発されるらしいプロジェクトのモデル。
次から次へとインベスターの投資ニーズがある限り開発され続け、膨張していくドバイ。留まるところを知らない。
ナヒール(Nakheel)
リーマンショック後のドバイショックで最も痛手を受けた不動産ディベロッパーはナヒールだが、その後今に至るまで比較的LOW KEY(大人しめ)なナヒール。新規ローンチ数も他のディベロッパーにくらべ圧倒的に少ない。まだバブル崩壊時の影響を引きずっているのだろう。
そんなナヒールが年末から販売開始すると言っている、360度全方向が海に面しているパームジュメイラの物件、その名も"Palm 360"。プライベートビーチも付いていて、なかなか期待が持てそうだ。
メラーズ(Meraas)
ここ数年、ジュメイラビーチレジデンス(JBR)のザ・ビーチやダウンタウン近くのCity WalkやBOX Parkなど、おしゃれな商業施設の開発で俄然存在感を高めているメラーズ・ホールディングス。
そんなメラーズが今回展示しているのは、ジュメイラ地区に開発する予定のこのプロジェクト、"La Mer"だ。
ジュメイラというドバイで最もプレスティジョスな場所で、なおかつ一戸建てと低層アパートが中心というとにかく贅沢なプロジェクト。まだ販売開始されていないが、さぞやお高いんでしょうねぇ・・・
というわけで、以上、大手ディベロッパーの動向を書きましたが、最近のドバイ不動産市場の傾向として、大型のユニットはそれほど飛ぶようには売れていない。まず売り切れるのはスタジオや1BRなどの比較的価格が安く投資しやすい物件だ。
それから過去2〜3年の開発の中心はドバイランドだったのだが、今回はDWC(ドバイ・ワールドセントラル)やダマック(DAMAC)が盛んに売り込んでいるAkoya Imagineという、とてつもなく市街地から遠い砂漠方面などにも開発が広がっている。
これらのエリアは投資案件としてはかなりリスクがあると思うが、それでもリーズナブルな価格も相まって結構売れており、オイル価格の低下も何のその、世界のマネー余りを吸収するドバイの底固さを感じる今回のシティスケイプ2016でした。
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