悲観大国ニッポン 英語の情報収集が脱出のカギ
たまたま日経新聞電子版で「悲観大国ニッポン 英語の情報収集が脱出のカギ」というコラムを読んだ。
それによると、2015年の調査において「自分と家族の経済的な見通しについて、5年後の状況が良くなっているか」という問いに対し、将来良くなっていると考える日本人は2割以下で、調査した28か国中最低。表で紹介されている国民の自国に対する信頼度ランキングでも41%と最低だ。
出典:日経新聞電子版より |
自分が働いている会社に対する信頼度でもダントツで最下位らしい。
東日本大震災のゴタゴタを契機に、人々の政府や組織に対する信頼を低下させた結果だとしている。
そこでコラムでは世界の人々から見た日本企業への信頼度が高いことを挙げ、日本に対する信頼度が低いのは日本人自身の問題で、それは情報収集が日本語に偏っているためで、日本のメディアのネガティブな報道により視線が内向きかつ悲観的になってしまっていると指摘。
世界的に見て恵まれている日本は、英語で(海外から)発信された情報を見れば日本に対する印象も変わるだろう(=自国の将来に対してよく思う日本人が増えるだろう)としている。
本当にそんな単純な理論で片付けられる問題だろうか。
他の国ではもっと貧乏で恵まれていない国があるのだから、それと比べて今の日本をありがたいと思い、将来は明るいと思いなさい、という事ですか???
徐々に沈みつつある豪華客船のような国、日本
海外で20年近く住んでいる私から(エラそうに)言わせてもらおう。自分のブログだから。英語メディアの報道を普通に読むことができても、やっぱり日本の将来は不安です。はっきり言って。
私の頭に浮かんだ日本の不安なところを一気に挙げてしまおう。
- 日本のリーダー(政治家、大企業経営者、官僚)達の問題を先送りする慢性的な体質
- ゾンビ産業に退出してもらって、新しい産業分野に力を入れるなど、痛みを伴うが早急にやるべき改革を政治家/官僚が断行できない
- 大卒時点で公務員や大企業に入れば世界でも類を見ない「人生の安定」を手に入れられるが、それ以外は労働市場の流動性が乏しいことからチャンスの少ない人生を余儀なくされる
- 学生が勉強しない日本の大学教育(子供には日本の大学だけには行ってほしくないと思ってます)
- 国民保険制度は財源が乏しくなる一方だが、改革が始まる気配もない
- 多分国民年金制度はこのまま続けられないだろうが、抜本的な改革が行われそうな雰囲気なし
- 日本政府の赤字国債発行は永遠に続きそうだ
- 将来的に消費税は10%以上になるかもしれない
- 特に根拠もなく、未だに「今の日本は最高の国だ」と考える、人口ボリュームの大きなシニア世代
- 圧倒的に弱腰で(というか足元見られてる感のある)、まったくダメな外交
- 選挙によって国を変えよう、と考えない国民性(どうせ投票したところで変わらないよね、という最初から諦めムード)
- 新たに当選した若手政治家はダメなやつだらけ(浪速のエリカ様、浮気イクメン議員など)
しまった・・・ 自分が朝日新聞のようになってしまった。
(ちなみに保身のために言っておくと、私は日本は憲法第9条を改正して国防軍を持つべきだと思うし、経済はどちらかと言えば規制の少ない新自由主義、道州制に賛成、と朝日新聞とは違うスタンスです。でも富の再配分は必要と思います。)
とりあえず何も考えずに列挙してみただけだが、結構出てきた・・・
もちろん上記は直ちに国が崩壊するような問題ではないものの、すでに多くの課題は10年以上前から問題視されきた問題なわけで・・・
5年後も同じ問題がやや大きな問題となって存在。10年後はさらに大きな問題となって存在。20年後も・・・30年後も・・・
と永遠に同じ問題を抱えながら、最後にはどうにもならなくなってガラガラポン。っていうのも冗談ではなくなりそう。
心配性だが臭いものには蓋をしがちな国民性
確かに日本人は世界の人々に比べ圧倒的に悲観的に物事を考える民族だと思います。そして心配性であるが故、早めの改善を行う。というわけではない。特に国レベルの問題では。
その「悲観的状況」を甘んじて受け入れ、耐えてしまえる人が多い。
その国民性は、良い方向では東日本大震災の様な大惨事でも冷静を保てる(暴動や強盗が発生しない)事などあるが、悪い方向では庶民一人一人が声を上げないため、改革への活力が生まれない、ということがある。
例えば、若い人にとってはいずれもらえなくなるであろう国民年金だが、「ルールで決まっているから」ということで多くの人は払い続ける。よって抜本的な改革が必要であるにもかかわらず問題を抱えたまま続いてしまう。
日本以外で同様のケースだったら間違いなく誰も払わないよね。将来もらえない可能性が高いのに払ってるなんてバカだと思われるだろう。
もちろん払わないことは良くはないんだけど、誰も払わないことによって制度が続かないなら、その制度は「間違っているから改革しよう」となる。
誇れる日本の歴史と文化
確かに現在の日本は大国で、成熟した産業があるし、自動車や電子部品、産業機械など世界に誇れる産業が多くあり、世界で最も恵まれている国の1つであることは疑いようがない。食やアニメなど独自の文化も花開いており、そういうところだけを英語の活字で読んだら、確かに冒頭の「英語の情報収集によって信頼回復」は言えなくもない。文化や産業といった分野では、自分たち日本人に自信と誇りを持つ国民も出てくるだろう。(安倍政権以降のテレ東の世界ネタの経済番組は良い例だ。日本礼賛のオンパレードで若干の気持ち悪さを感じますが。)
一方、私が住んでいるドバイ/UAE。もともと産業はオイルだけ。放っておいたら植物すら生えない。自国発の製造業はほぼ皆無。
でもなぜかUAEの方が10年後の状況が良くなっていると感じてしまう。
私が思うにそれは、国のビジョン、指導力、行動力の問題ではないだろうか。
例えばドバイでは、1980年代から資源の枯渇を想定して、その他の産業の育成を試みている。成功した例をあげれば、貿易のハブとしての機能、経済特区(フリーゾーン)を設置して外資を呼び込む事、その外資による不動産開発、税金が無い事を武器にした金融ハブ機能など。
本屋ではドバイの王様、モハメド・アル・マクトゥーム著作"My Vision"(ドバイの将来に関する王様のビジョンを書いた書籍)がベストセラーで常に目立つところに置いてあり、将来に対し指導者がどんなビジョンを持っているか知ることができる。
アブダビでは自然エネルギーの都市計画、マスダール・シティなど様々な試みを行う。
UAEでは革新的な技術への関心の高さと、それを可能にする法整備も早い。(革新的な技術自体は技術者の乏しいUAE自身からは中々出てこないのであるが)
国民にウケる政策だけではない。最近はオイル価格の下落に伴い財政収入の多角化が迫られていることから、早々にVATの導入を決めた。もちろん現時点では財源に余裕はあるが、将来を見越して早めに行動する。
もちろん全てがうまくいくわけではないが、ポイントは問題に対し真正面から向き合うのが早いこと、改革を実行するのが早い事、国民に向けてのビジョンが明確であることだろう。(独裁だということもプラスに働いているが。)
一方日本で閉塞感があるのは、将来良い方向に変わっていきそうな活力が、何かと保身に走る日本のリーダー(政治家&官僚)からは感じられないからではないだろうか。安倍政権は健闘していると思うが。
日本の指導者が将来に描くビジョンなどまったくわからないよね?
移民を受け入れて大国として続くのか、受け入れずに縮小していくのか。
高い税負担で社会保障を拡充した社会を作るのか、それともアメリカのように弱肉強食の社会になるのか。
方向性を決められず、中途半端でなあなあになっているうちに、気付いたらアメリカのような国(でもアメリカのようなイノベーションや活力はない)になっちゃったよね、という感じが今の方向性かな。あえて言えば。
若い富裕層が日本を脱出
ここ2年くらい、着実に日本の富裕層(特に若い世代の富裕層)の日本からの脱出、または脱出を模索する動きを日々ビジネスを行う中で感じます。マイナンバー制度導入が契機になっているのかもしれません。「富裕層」を毛嫌う人の多くは、税金を払いたくない金持ちが海外に脱出している、と思うかもしれない。だが必ずしもそれだけではない。
日本の将来に不安を感じている若者で、なおかつ海外に出ても当面食べていける資産を持っている人、またはITなどオンラインを利用したビジネスで海外に出ても食っていける若者にとっては、日本以外の国へ移住することも普通に選択肢の1つとなりつつある、という事だろう。
それは日本が若者にとって魅力の無くなりつつある国、と見えることに間違いはない。
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