「アラブ人男性はスイーツがお好き」と市場を知る事の重要性

先日、妻が行きたいというので、ダウンタウンにあるパンケーキ屋、 “Clinton Street Baking Company(クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー)”に行った。

本店はニューヨークにある有名店らしい。その名の通りクリントン・ストリートにあるのだろう。
私はNYに長いこと住んでいたが、行ったことはなかった。特にパンケーキ好きでもないし。

でもこのパンケーキは厚みがあってもちもちしていて非常に美味しい。ただしパンケーキはデカいので、全部は食べられなかった。





当然、有名店なので東京(青山)にもあるようだ。

感覚として「青山のおしゃれ目なパンケーキ屋」といったらどんな客層を思い浮かべるだろうか・・・・

女性
若いカップル
ママ友グループ

なんてとこかな。おじさん1人ではなかなか行かないよね。

それではドバイ・ダウンタウンのパンケーキ屋(週末午前中)ではどんな客層だったかというと・・・

欧米人風の奥様グループ
欧米人風の家族

といった日本と同様な層に加え、欧米人風のおじさんお一人様、そして意外にも客の半数程度を占めていたのが、20代、30代とおぼしきアラブ人男性2、3人組のグループだ。そう、アラブ人女性ではなく、アラブ人男性グループだ。
ドバイ人口の多くを占めるインド人、パキスタン人など南アジアの人は全く見かけなかった。


日本のおしゃれなパンケーキ屋に20代、30代のヒゲの濃い男性客が沢山・・・

っていうのはあまり想像できませんよね。

スキンヘッド&ヒゲに筋肉モリモリマッチョのアラブ人男性2人組が、本日おすすめの特大ワッフル+フルーツ&ホイップクリーム大盛りなんか食べているところを見るとなんか微笑ましい。

じつはドバイを含むGCC諸国のアラブ人は、宗教の関係(イスラム国家)でお酒を飲まない人が多く、とにかく甘い物が好きな人が多い。

そして(多分その結果)糖尿病の発症率も非常に高い。中東スイーツとしてはバクラヴァなどのレバニーズ・スイーツが有名だが、暴力的とも言える強烈な甘さに圧倒される。(でも美味しいですよ)

そんな感じでスイーツに限らず、実は日本から想像するのとはちょっと市場が違う、というケースは多々存在する。

日本のテレビでドバイのネタ見ると、とにかく「金持ち」「セレブ」を連呼するので「高い物でも何でも売れる」と思っている人が結構いるが、実はそう単純ではない。

金持ちはもちろんいるが、単純に金持ちの数なら圧倒的に日本の方が数が多いし、「高いモノ」なら何でも買ってしまうほどここの消費者はバカではない。

オイル以外、自国でほとんど何も生産しないUAEは、ほぼ全ての物品を世界中から輸入している。日本製品(メード・イン・ジャパン)では自動車や産業機械といった分野で強い。

ただし日本からのコンシューマー・グッズは非常に苦戦している、と言わざるを得ない。

なぜなら、世界中からグッズが集まるドバイでは、

  • 安い商品は他のアジア勢に押され劣勢(家電などが代表的)
  • 高い商品はヨーロッパ製品のブランド力に敵わない(衣類、バッグ、時計等々)

からだ。

UAEは親日国ではあるが、「メード・イン・ジャパン」が有利だった時代はすでに終わっているし、東南アジアと違い「憧れのベクトル」はヨーロッパに向いている。
市場を理解する、という点ではたとえばこんな話がある。

日本から、日本伝統のある高級素材を使った非常に涼しい、そして日本製なので値段の高いワイシャツがある、と言う。(特に知られたメーカーでは無い)
社長はドバイに来たことは無いが、とにかく「ドバイで売れるに違いない」と断言している、という。

「真夏の気温45度に達する金持ちの国ドバイで、涼しい特殊素材を使ったワイシャツ。ただし値段は高い。」

なんか一見すると売れそうですよね。

しかし実はそんなに単純では無い。

ドバイに夏場ビジネスで来たことがある人はご存知と思うが、外は気温40度を軽く超えているというのに、スーツの上着だけならまだしも、ご丁寧にネクタイまでしているビジネスマンがけっこう多い。

ここでは英国の植民地だったことで、正装文化があるのだろう。アメリカ式のカジュアルさとはちょっと違う。

ドバイでお金を持っているのは、こういった業界で働く層が多いし、またはカンドゥーラという地元の民族衣装を着ているGCC諸国のローカル達だ。当然カンドゥーラを着る層に機能性ワイシャツはいらない。

そしてオフィスの中は冷蔵庫のように冷え冷え。

とにかく寒くて上着が必要なのだ、外は40度だと言うのに。こうなるとシャツの機能性で涼しい、というのはどうでもよくなってしまう。日本のように節電だ、エコだ、など無いのでちょっと暑ければ室内温度を0.5度下げればよい。

そして同じ高い値段を出すなら、機能性よりもアルマーニなどブランドシャツを選ぶ人が圧倒的に多い。アルマーニのシャツが多少暑くても室内温度を下げれば良いのだ。

日本のように「暑さに自分を調和させる(エコ)」のではなく、暑さを「豊富なエナジーを使って自分に調和させる」のがここのやり方だ。

一方、外で作業をしなければならない層というのもいる。

こういう層はとにかく過酷な暑さの中での作業を強いられるが、こういった職業につく人は「高級ワイシャツ」を買う層ではないし、雇い主がユニフォームを支給するのが通常だ。
労働者をけっこう酷使するアラブ系/南アジア系の会社では、雇い主が機能性シャツを従業員へ渡して生産性アップ・・・などとは考えない。

というわけで、「値段が高く機能性であるが、ブランドが知られていないワイシャツ」はターゲットとニーズがちぐはぐになってしまう。

実は日本の「モノづくり」に典型的な、「名前は知られていないが品質が良く、値段が高い」というコンシューマー・グッズは非常に難しい市場なのだ。

高いモノを売りたいのであれば、ゼロからのブランド創りに尽力しなければならない。


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