マイケル・ムーアのSiCKO

いまさらながらケーブルテレビでマイケル・ムーアのシッコ(SiCKO)を見た。

まあ映画で取り上げられている例は極端に酷い例だと前置きしても、僕はアメリカに長いこと住んでいたがとにかくアメリカの医療は酷い。
医療費の余りの高額さに保険に入れず、でも急病で病院に担ぎ込まれてしまったために治療費を踏み倒した人を複数知っているし、当時妊婦の妻を持つ友人は何らかの処置をほどこす毎に保険会社に確認の電話を入れる(保険でカバーされるかどうかを確認する為に)と言っていた。

映画の中でマイケル・ムーアが病気持ちの911の患者をグアンタナモの収容所の病院に連れて行く所はご愛嬌として・・・

これを見ると本当にアメリカは「弱者に厳しい国だなあ」と思う。 昔は「アメリカン・ドリーム」などどよく言われたけど、アメリカでは貧困層になってしまったらそこから這い上がるのは難しい。例えばプロスポーツ選手になるとか、ヒップホップ・スターになるとかでアメリカンドリームを体現することはできるがそんな人は稀だ。
アメリカの有名大学の入試は日本で言う所の推薦入学のような形式なので、学力だけではなく当然家柄なんかも加味される。学費も高いからもともと金持ちでなければ4年も通えない。ハーバードやプリンストンなんかを卒業すれば当然将来も約束される。なので金持ちはどんどん金持ちになっていく仕組みが出来上がっている。かつて詰め込み教育だなんだといろいろ言われた日本の大学入試だけど、一発試験で金持層も貧困層も皆同じスタートなのはある意味民主的か?

そんな中でアメリカでも医療改革が始まったが、日本はどうだろう。
いろいろ問題はあるようだが、国民全員が何らかの保険に加入し必要な時に医療が受けられる体制になっているのは良いと思う。

日本に関して個人的に思うには、医療を含め福祉・教育に関しては北欧の「助け合い型」を目指すべきではないかと思う。当然税金は高くなるが、それが「皆中流家庭」で幸せだった日本人の気質に向いてるのではないかと思う。(長く海外に住んで日本で納税義務のない僕がいうのも大きなお世話かもしれないが。)

ところが日本は政治家がリーダーシップを発揮できないので、将来の方向性がよくわからない。今の日本はアメリカ型「弱肉強食国家」をめざすか北欧型「皆助け合い福祉国家」を目指すのか大事な岐路に立っていると思う。
基本的に「政治家」自体が国民の代表というよりは「もともとお金持ってる権力のある人達」の集まりだからあまり期待はできないのかもしれないが、まあ少なくとも民主党政権になったことで、自民党政権時代の「なんかよくわかんないけどアメリカみたいな国になりつつあるよね?感」からは脱却しつつあるのは良いかもしれない。

ところでドバイではどうかと言うと、Emirati(UAE国民)は教育も医療も電気水道代もタダ。オイルマネーがあるからね。
国内にいる大多数の 外国人の医療はどうかと言えば、UAEで提供する公共病院が使えるベーシックな保険(安い)とアメリカと同じように民間で加入する保険の二本立て。民間保険はアメリカのそれよりもかなり安い。(幸い健康で、実際にあまり使っていないので詳しいことはよくわからない。)

ちなみにドバイでは王様が国の政策をすべて決定するので、僕が居住者として国の政策についてとやかく言ったところで意味が無い。ある意味日本と違って王様一人がものすごい権力を持っているので政策実行も早いけど、急ぎ過ぎた不動産開発の失敗のようなことも起こり得る。その失敗で失脚、なんてことも無いし。
だから多くの外国人にとっては居心地が良ければここにいるけど、逆になったらさっさと他の国へ行ってしまうだろう。 でもUAEにとっては「外資」は重要だから外国人がそれなりに居心地が良い政策を提供する。その辺のバランスで国の政策が決まっていく。

まあ国が違えばそれぞれの事情も違うということですかね。僕にとってはいずれ日本に帰る事もあり得るし、その為にも日本には「暮らしやすい良い国」であってほしいと思うわけです。





–>